別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
凛と彼の戯(たわむ)れを見ていたら、あのときの選択は正しかったのだろうかとも思ったけれど、やはりこれでよかったのだ。


「俺はもっと振り回されたかった。心春に一生、振り回されたかった」


陸人さんは悔しそうに吐き出した。

それはやはり謝罪の気持ちから?
だとしたら、もう楽になってほしい。


「ごめんさない。私、陸人さんの苦しみなんて全然わかってなくて……」


自分の存在がどれだけ彼を追いつめたのだろうと考えると、いたたまれない。


「俺の苦しみ? 心春と一緒にいる間、苦しみなんてひとつもなかった。心春がいなくなったのが最大の苦しみだ」


唇を噛みしめる彼は、眉をひそめる。


「あんなかわいい娘がいたのに、心春ひとりに苦労させてしまって申し訳ない。もっと早く見つけていれば……」

「違うって言ってるじゃないですか」


泣きそうになるのをこらえて、あえて冷たい言い方をした。
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