別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
「陸人さんに悪いところなんてひとつもありません」


むしろ私は彼に救われたのだ。


「俺はどうしたら……」
「もう私たちのことは放っておいてください。あっ、でも凛の傷だけは……」
「もちろん、治す」


彼は私に真剣な眼差しを注ぎ、即答した。


「だけど、放ってはおけない。凛ちゃんは俺たちの子だから」


背中の傷痕を気にして生きてきた私が、ほかの男性に抱かれるわけがないとわかっているからだろう。

どれだけ否定しても彼は主張を曲げない。

どうしたら陸人さんを解放できる?
あの事件を忘れて、自分のための人生を歩かせてあげられるのだろう。

でも……たとえ私に向けられた感情が愛ではなく贖罪だったとしても、凛にとっては父親がいたほうがいい?

私の心は激しく揺れ動いた。


「ママ!」


沈黙が続き、気まずい雰囲気が漂ってきたところで、凛が絵本片手に駆けてきた。


< 166 / 335 >

この作品をシェア

pagetop