別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
「心春がいなくなって、しばらくなにも手につかなかった。心に穴が開いて、堀田に休養を言い渡されるくらい参ってしまった」


それは、償いの対象を失ったからではないの?


「陸人さんは、私の背中の傷の償いをしたいだけです。でも、もう十分。私のためにお医者さんになって、結婚まで考えて……」


涙声になり続かなくなると、彼はようやく手の力を緩めて私の顔を覗き込んだ。


「心春。思い出したの?」
「思い出した、というか……」


吉野さんの辛辣な指摘が頭をよぎり、言葉に詰まる。
すると彼は唇を噛みしめて、首を横に振った。


「違う。そうじゃない」
「えっ?」
「たしかに、医者を目指したのは心春の傷を治したかったからだ。でも、償いがどうとかじゃなくて……。結婚だって、心春が好きだからプロポーズしたんだ」


彼の言葉がしばらく呑み込めない。

それは本当なの?

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