別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
そこまで言うと、彼は再び私を抱きしめた。


今度はふわりと優しく。
ためらう私に配慮してくれたのかもしれない。


「ごめん。本当にごめん。思い出したくないよな。ずっと忘れてていいんだ」


そんな。吉野さんに誘拐事件が原因でできた傷だと教えられなければ、私は陸人さんの苦しみに気づかず、身勝手に甘えていたはずだ。

そんなのは嫌だ。


「いえ。私、自分だけが苦しいと思って生きてきました。でも、被害者なのに私を傷つけたと罪の意識を背負い続けている陸人さんのほうがつらかったんじゃないかって……」


泣くまいと思っていたのに、頬に涙が伝う。

どのタイミングでどんな道を選択するのが正解だったのか、私にはわからない。


「陸人さんは陸人さんの人生を歩んでくださいって、そういうことだったのか?」


私は彼の腕の中でうなずいた。


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