別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
陸人さんは優しい笑みを浮かべて、こぐまさんのはちみつケーキを手にする。


「私、大切な思い出まで忘れてしまっていて、ごめんなさい」

「だから、心春が謝ることなんてひとつもない。俺……あんなに笑顔がかわいかった心春が、あの事件以降笑わなくなってしまったのがつらかった。俺のせいだと悩んだ時期もあった」

「違う!」


気がつけば大声で否定していた。

陸人さんも事件の被害者なのだ。

それに、私が笑わなくなったのは、背中の傷を見て陰口を叩きながら離れていった人たちのせい。


「ありがと。心春は俺が『背中の傷の償いをしたいだけ』と話していたけど、その気持ちがまったくないとは言わない。できれば自分の手で心春の傷をきれいにしたいと医者になったのも事実だ。でも……」


彼は私に強い視線を送り、スーッと大きく息を吸う。


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