別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
「それは全部、心春が好きだから。家族や友人……誰と一緒にいても、心春と過ごした時間のような心地よさは味わえなかった」


傷を知られるのを恐れていた私が陸人さんに心を開けたのは、彼の優しさや誠実さが伝わってきたからだ。

けれどもそれ以上に、彼と過ごす時間が心地よかったのは間違いない。


「幼い頃の結婚の約束なんて無効なのはわかってる。だけど、心春が食彩亭で働きだしたと謙一くんから聞いて、すっ飛んでいって……。客と店員としてでもまた話せるようになって、やっぱり俺には心春しかいないと確信した。救急車が何台も入ったあとは、心春に会いたくなるんだ。会計のときの『お疲れさまです』というひと言が、どんなに癒しだったか」

「そんな……」


彼は大げさに話しているだけだろう。
でも、勇気を出して声をかけてよかった。


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