別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
「きっとつらいこともあっただろう。傷だって痛んだはずだ。でも弱音も吐かずに笑顔で接客を続ける心春が、俺にはまぶしかった。自分にできることを少しずつ着実に積み重ねる。そういう地道な努力は目立たないけど、生きていくのには重要なことだ。重さんたちが心春をかわいがるのは、きっと心春がそういう努力を怠らないからだと思う」


努力もなにも、周囲に甘えて生きてきた自分から脱皮したかっただけだ。


「謙一くんも言ってた。心春は本当にすごい妹だって。つらいときは頼ればいいのに、自分で踏ん張ろうとする。そんなの見てたら守ってやらなきゃと思うって」

「兄が?」


兄がそんなふうに見守ってくれていたとは。


「うん。でも俺も同じ。心春を守るのは俺でありたい。いや……つらいときは俺の腕の中で泣いてほしい。もう全部荷物を下ろして、甘えてくれないか?」

「陸人さん……」


たちまち視界がにじんできて、頬に涙が伝う。

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