別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる


「あぁ……っ」


初めて抱かれたときのように緊張しているのに、少し触れられるだけで甘い声が漏れてしまう。

陸人さんに教え込まれた女としての悦びが、よみがえってくるのだ。


「好きだ」


心の底から振り絞ったというような彼の告白に、胸がしびれる。


もう陸人さんと一緒に生きていくのは無理だと思っていた。

彼を苦しめたくないと随分悩んだ。

凛から父親を奪ってしまった罪悪感にさいなまれて、ひとりでふたり分の愛情を傾けなければと必死に走ってきた。

自分で選択した道なのだから弱音は吐けないと歯を食いしばる毎日は、つらくなかったわけじゃない。

凛に隠れて泣いたことも数知れず、そのたびに自分を奮い立たせてなんとか今日まで生きてきた。

その苦労がすべて報われた気分だ。


「陸人、さん……私も」


世界でたったひとり愛する男性に気持ちを打ち明けられる喜びは、なににも代えがたい。


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