別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
すると母が気づいて、「ケーキ、違うお部屋で食べようか。おもちゃもあるんだよ」と凛を別の部屋に連れ出した。

凛に聞かせたくない話があるのかもしれない。


「座れ」


凛と母が出ていくと、父にソファを勧められて兄とふたりで腰掛ける。


「どういうことだよ、親父」


兄がけしかけると、父は難しい顔をして口を開いた。


「事件のあと、天沢くんと心春の仲を引き裂いたのは私だ。まさか、こうして今日まで縁が続くなんて思ってもいなくて……」


それはそうだろう。
ましてや私は陸人さんの記憶を失っていたのだから当然だ。


「心春の記憶がなくなったのは衝撃だった。でも、心を守るための自己防衛反応だという医者の言葉に納得した。それなら、決して事件を思い出させてはいけないと、心春に会いたいと泣く天沢くんの面会を断り続け、あちらの親御さんに二度とかかわらないでほしいと伝えた」


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