別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
天沢家の問題もある。

陸人さんは両親と何度か話し合いの場を持ったようだが、いまだ芳しい返事は聞こえてこない。

吉野さんとの縁談を望んでいた両親だけに、おそらく私との結婚を反対しているのだろう。

急に孫までいると言われても、簡単に受け入れられない気持ちもわかるので、あえて触れないようにしている。


「先生優しいだろ?」
「うん。すごーく。でも叱られた」


重さんに尋ねられて、急に顔をしかめる凛に驚く。
そんな話は聞いていないからだ。


「なんで?」
「凛、こぐまさんいるか窓を開けたの。そうしたら……」


そんなことがあったの?

三十二階にある陸人さんの部屋では、ベランダに出るのを禁止している。
もちろん、落ちたら命がないからだ。

あのマンションに引っ越したとき、最初にそれを言い聞かせて指切りもした。
だから大丈夫だと思っていたのに。


「こぐまさん?」
「お山にいるの」


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