別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
恵子さんの質問に答えた凛だが、顔をゆがめている。


「凛。ベランダに出たらダメってお約束よ」
「ごめんなさい」


凛は眉をハの字にして瞳を潤ませた。


「もうしないよね」
「うん」


重さんの念押しに、ポロリとこぼれた涙を拭う凛は大きくうなずく。


「天沢さん、いいお父さんしてるじゃない。甘やかすだけじゃ子供はまっすぐ育たない。気に入られないといけない微妙な時期でもちゃんと叱れるんだから、これからも心配ないわね」


恵子さんが私の耳元でささやくので、納得した。

よくない行為を正すのは親の重要な役割だ。

私以上に親として凛にかかわれている陸人さんに感謝した。


コロッケを持った凛と一緒に食彩亭を出ると、人が立ちふさがったので視線を向ける。


「やっと会えた」


冷めた口調でつぶやいたのは、吉野さんだった。


「あ……」


凛は覚えていたようで、妙な声をあげて私にしがみついてくる。


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