別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
「凛、お口に入れすぎだぞ」
「パパ、たへなふと……」
「なに言ってるかわかんないよ」


白い歯を見せる陸人さんは、凛を愛おしそうに見つめた。



五月半ばの金曜日。
遠くの山には、生命力を感じる柔らかな黄緑色をした木々の若葉が生い茂っている。

晴れ渡る空を見上げて、「行くよ!」と私たちを急かす凛は、お菓子を詰めた小さなリュックを背に満面の笑み。

今日は待ちに待った遠足なのだ。


陸人さんは日勤になりそうだったが、堀田さんが快く交代してくれたのだとか。

周囲の人たちが私たち親子を温かく見守ってくれているのがありがたい。


「心春、弁当持つよ」
「ありがとう」


早朝から張り切って作った弁当には、凛の大好物の肉じゃがコロッケをはじめ、白だしにつけ込んだ鶏肉の唐揚げやだし巻きたまごなど、重さんに教えてもらったおかずがたくさん入っている。


「凛。危ないから手をつないでね」


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