別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
私が手を差し出すと、凛は最初に私の手を握り、次にもう片方の手で陸人さんの手をつかんだ。

最近はどこに行くときもこのスタイルで、幸せを噛みしめている。


「クジラさんいるかな」


この日のために、絵本で海の生き物について勉強済みの凛がつぶやく。


「クジラは大きいからいないかもな。イルカはいるぞ」


陸人さんも忙しい合間を縫って水族館について調べたらしい。


「イルカさん乗れる?」
「うーん。凛はちょっと無理かな」


絵本にそんなシーンがあったからだ。

陸人さんの返事に「なんだぁ」と落胆している。
どうやら本気で乗るつもりだったらしい。

子供の思考は想像できないほど広く、楽しいものなのだ。

私や陸人さんも、幼い頃は絵本の世界にトリップして、非日常を味わっていたのかもしれない。


保育園周辺の道路には、観光バスが何台も到着していて、凛のテンションが上がっていく。

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