別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
絵麻は、天沢さんの大切な人が私だと思い込んでいるからそんなふうに言うけれど、違う可能性のほうが高い。

私は、もう少し話ができるようになれればそれだけで幸せだ。


「心春。怖いのはわかるけど踏み出してみようよ」


彼女の言う通りかもしれない。

傷つくのが怖くて、絵麻以外の人とはあまり深い付き合いをしないできた。

けれども、もし踏み出した先に幸せな未来があるのなら――という期待も膨らむ。


「もしダメだったら、ピザのやけ食い付き合ってくれる?」


私が言うと、絵麻は目を細めて白い歯を見せる。


「もちろん。チキンもジュースもつける」
「ありがと。電話してみようかな」
「了解。私、違う部屋に行ってるから、終わったら呼んで」


彼女は私をギュッと抱きしめてから出ていく。
まるで勇気を分けてくれるかのようだった。

財布に大切にしまっておいたメモを取り出して、深呼吸する。


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