別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
「昨日のお礼に肉じゃがを作ったん――」
『すぐ行く』


私の言葉に被せるように言う彼に驚いたものの、嫌がられてはいないと確信して、ようやくまともに息が吸えた。


「今、友達の家にいて……」


偶然にも、彼の住まいがこの近くだと判明したので、最寄りの駅まで来てもらうことになった。


会う約束をしたと知り大喜びの絵麻に、「頑張りなさいよ」と送り出されて、駅のロータリーで待つこと十分。


「心春さん」


どこからか声がしてキョロキョロすると、路肩に停めた車の中から天沢さんが呼んでいた。

急ぎ足で向かうと、彼は中からドアを開けてくれる。


「こんにちは」
「こんにちは。ここ、狭いから移動しよう。乗って」


ガチガチに緊張していたものの、少し焦った様子の彼に促されてあっさり助手席に乗り込んだ。

ブルーのシャツに紺のジャケットを羽織り、ジーンズ姿の彼はとてもさわやかだ。

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