別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
やはり白衣姿を見ていないせいか、医者には見えない。


「急かしてごめん。駐車場が満車で停められなくて」
「いえ」
「電話、うれしかった」


前を見据えてハンドルを操る彼の表情が柔らかくて、緊張のあまり激しくなっていた鼓動が落ち着いてくる。


「せっかくのお休みなのにごめんなさい」
「とんでもない。雨は嫌いだったんだけど、今は感謝してる。こうして心春さんとお近づきになれたからね」


彼が優しい言葉をかけてくれるので、気持ちが高揚していく。
勇気を出してよかった。


「顔色はいいね」
「はい。天沢さんのおかげで元気が出ました」


思わず本音を漏らしてしまい、しまったと思ったけれど、「それならうれしい」と言われてホッとした。


「昼ご飯食べた?」
「いえ、まだ……」


ピザをひと切れ食べたが、それは黙っておこう。


「それじゃあ一緒に食べない?」
「はい、ぜひ」


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