別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
思いがけないお誘いに、心が弾む。


「毎日あんなにおいしいもの食べてる人をどこに連れていこうかとずっと考えてたんだけど、フレンチはどう?」

「フレンチ? そんなお高いところでなくても」

「ほんとは肉じゃがが早く食べたいんだけど……」


あっ、肉じゃがのことなんてすっかり頭から飛んでいた。


「もしよければ、ほかにもお作り……なんでもありません」


私、なんて大胆な発言をしているのだろう。
作るということはどちらかの家に行くということなのに。


「いいの?」


彼が思いきり食いついてくるので、びっくりだ。


「もちろん。でも、重さんみたいには作れないんですけど」

「手料理なんて最高だ。うれしいよ。俺の家でいいかな。一応、調理道具はそろってるんだけど、ほとんど新品で」


どうしよう……。
なんと答えたら正解?
こんなときの駆け引きなんてわからない。


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