別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる

予約を受けていないのは、以前大量の予約をしておいて取りに来ないお客さんがいたからだ。

予約をしたいほど食彩御膳を楽しみにしてくれていてうれしい。
でも、重さんひとりで作っているし、たくさん残って廃棄になっても困るので、このスタイルを変えるのは難しいのだ。


「謝れば済むのかよ！俺の昼飯どうしてくれるんだ」


なにか嫌なことでもあったのだろうか。
売り切れと聞いて残念そうに肩を落とす人はいても、ここまで怒りをむき出しにする人は記憶にない。


「本当にすみません。ほかのお弁当でしたら――」
「俺は食彩御膳が食いたいんだよ！」


男性の声が奥で休憩していた重さんに聞こえたようで、足音が近づいてくる。

売り子の私がなんとかすべきなのにと焦ったが、男性の剣幕に強い恐怖を感じて言葉が出てこない。


「客は神さまじゃない」