別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
翌日の十二時少し前に、陸人さんは食彩亭に姿を見せた。
「いらっしゃいませ」
いつも通りに対応するも、なんだか決まりが悪くて視線を合わせられない。
「今日はまだある?」
「はい。今日は栗おこわなんです。争奪戦になると思いますので、ラッキーでしたね」
もちろん、食彩御膳の話だ。
「うん。最近、いいことばかりだ」
それ、私とのこと?
彼が私に微笑みながら言うので、照れくさい。
「堀田も欲しいらしいからふたつ」
「はい。ありがとうございます」
食彩御膳をふたつ袋に入れたあと会計を始めると、彼は釣り銭トレイになにかを置いた。
「これ……」
「うちの鍵。いつでも来てくれていいから。俺、勤務が不規則だから、いなくても勝手に入って」
彼は小声でささやく。
「……はい」
ほかのお客さんに見られないように、それをエプロンのポケットにしまった。