年下男子に愛されすぎてツラい
朝比奈 蓮side


えまと名乗る女の人について行くと
目の前にはタワーマンションがあった。



きっと本当に優しい人なんだろう。



そう思ってはいるけど信じることは出来ない。

大人なんて大嫌いだ。



いつも兄ちゃんに酷い事をするんだ。


兄ちゃんはいつも俺を守ってくれる。


今度は俺が守るんだ。


感謝はあれどこの女の人も絶対信じない。
そう決めている。



タワーマンションの最上階に着き部屋に入ると
大声で怒っている男の人がでてきた。


『どこ行ってたんですか?!!お葬式に出席したらすぐ帰る予定でしたよね?!』



え『ははは…まぁ色々あったのさ♪
紹介するね!この子達、私が面倒見ることにしました!』


京『朝比奈 京です』

「蓮です」


え『この人は私のお仕事をサポートしてくれてる人です!
家で必要な物とかはこの人に言ってね!』


新『市川 新 -イチカワ アラタ-と申します』


すっげーかっこいいなこの人。
目が青い、ハーフか?


新『まぁ君たちに言うのは酷だが…

ぜったいに甘露寺に迷惑をかけないでくれ。』


大人は言うよな、迷惑をかけるなって…
結局この人もそうなんだ。


え『ちょっと…』


新『あなただって分かっているでしょう?!
今店にとって一番大事な時なんです。
今日だってギリギリ予定を調節したのに
帰ってこず〜…』


長い説教が始まりえまさんを見ると
まるで聞いていない。


え『気にしないでのびのび育てばいいのよニコッ』



そう俺達に笑いかけてれた。


え『子供は迷惑かけて学ぶものなんだから!』



変な人…


それから夜ご飯を食べ部屋に案内される。



ひっ広い…しかも一人部屋。


え『さっき買った物が入ってるけど
必要な物があれば書き出しておいて♪』


京『何から何まで本当にありがとうございます…何で返せばいいのか…』



え『気にしちゃだーめ!一人暮らし寂しかったからいいの♪』



「お店…大変なの…?」


俺は何気なく市川さんに聞いてみた。
アパレル関係って言ってたけど…


新『…先程のこと、気にしているならすまない。
ただ、大事な時期なのは本当だ。』



なら余計になんで俺達なんて引き取ったんだ…
あんなに小さい体で沢山のことをしているんだ。


「そうだったんですね。そんな時にすいません。」



新『自分と重ねてしまいほっとけなかったのだろう。
おっと、今のは聞かなかったことにしてくれ。』



俺達と…同じ…?



え『明日から学校だよね!早く寝なさい!』



自分の部屋に戻り布団に入ったが眠れない。

色んなことがありすぎた。
一日で全てが変わってしまった。


「父さん…」


優しい人だった。

母さんですら俺達を捨てたのにあの人は
必死に父さんになろうとしてくれた。



唯一、信じられた大人だった。

なのに…


ベッドが大きく落ち着かない俺は
兄ちゃんの部屋へと向かった。



ガチャ



京『ん…えまさん…?』



「兄ちゃん…俺…」



京『蓮か。どうした?』



「落ち着かなくて。」


京『はははっ俺達こんな大きい布団で寝た事ないもんな!』


兄ちゃんはいつも優しい。
学校を辞めて俺を育てる気だったんだ。

俺達が一緒にいられる為に。


京『すごい人だな。えまさん。
俺と5つしか変わらないのに』


「うん。不思議な人、なんで俺達なんか引き取ったんだろう…気まぐれに捨てられるかもな」



京『そんな人じゃないと思う。』



兄ちゃんが真っ直ぐこっちを見てそう言った。



京『あの人がは違う気がするんだ…
確信はないけど。』



兄ちゃんがそんな事言うと思わなかった。
でも俺は…兄ちゃんしか信じない。


「そっか…俺はまだ信じられない。
いつか手のひら返されるか分からないからね」



京『そんな日が来たら、兄ちゃんが守ってやる』



そう言って恥ずかしそうに背中を向けて寝転がった。

ありがとう兄ちゃん。


俺も兄ちゃんを守るから。




え『おはよ〜どう?眠れた?』



「おはようございます。昨日とは違って格好がキチッとしてますね。」



え『堅苦しいよね〜でも私、店長だから
見栄えだけでもしっかりしてなきゃね!』



「兄ちゃんは?」



え『先に出たよ。ちょっと学校まで時間かかるみたい!』



はいどうぞと出された朝ご飯を食べながら
朝ご飯が出るのなんて何年ぶりだろう…

そんな事を考えていた。



「どういうお店に務めてるの?えまさんすごい人なんでしょ?」



え『すごい人ってわけでもないよ(笑)
でもそうね〜…絶対に好きな服が見つかるお店…かな?』



「へーそうなんだ…。」



そう言いつつ気になって仕方がない。
密かにアパレル業界に憧れを持っていた。



漠然とアパレル業界に入りたいと思っているからだ。



え『ところでさ…もう9時だけど学校間に合う?』


「あ〜いつも午後からとかに行くからな〜」



え『明日からはきちんと朝から行くこと!
いいわね?』



「世間体を気にする人?」



え『あなたの将来のため』



大人はみんなそうやって言うんだよ。
俺の顔なんて見向きもしないで…
みんなと同じになりなさいって。



『あなたの言葉が聞きたいの』



そんなの最初だけ
この人もきっと…



「努力はするよ」
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