マリアの心臓
決意を新たにした、4日後のことだった。
――転院した先で、マリアが、死んだ、らしい。
『鈴夏……っ、ごめ、ごめんね……っ』
頭の中が、真っ白だ。
どうして母さんが泣きじゃくっているのか、わからなかった。
学校から帰ってきて、宿題もそっちのけで、いつもどおり見舞いに行こうと、転院先と病室を聞いただけだ。
それが、どうして。
『マリアが、なんて……?』
『病態が急に悪化して、そ、そのまま……っ』
『……え……? なんで……どうして……?』
だって、つい最近、会ったんだよ?
傷の手当てをしてくれたんだ。
笑っていた。
たしかに、生きていたのに、どうして。
『どうして……? どうして……!!』
『ごめん……ごめん、鈴夏……っ、ごめん……』
暴れるボクを、母さんが強く抱きとめた。
詳しいことは何も言おうとせず、ごめんの3文字だけをただひたすら繰り返すばかり。
ふたりで住むには少しばかり広い家の真ん中で、泣き崩れ、叫び散らし……あまりの苦痛に胃の中のものを吐き尽くした。
『っ、……あいつの、せいだ……』
『すず、か……?』
あいつが。
父さんが、追い詰めたせいだ。
だからマリアはいなくなったんだ!
何もかも父さんが悪いんだ。
許せない。
……許さない!
…………ちがう。
こんなの、八つ当たりだ。
そんなことわかってる。
だから何だって言うんだ。
誰かのせいにしないと、生きていけなかった。
現実から逃げ出してしまいたかった。