マリアの心臓
今いる、ここは、ステージの上。
劇を披露するのにこれ以上うってつけなところはない!
でも……こんな唐突に劇を始めるかな?
あっ、そういえば!
看護師さんからおすすめしてくれた映画で、突然歌ったり踊ったりするシーンがあった。
あのときはフィクションだからと納得していたけど……あれは、リアルでもよくあることだったのかも!?
そうなるとすべての辻褄が合う。……たぶん!
劇って、当然悪いことではないし。
むしろすっごく楽しいことだろうし。
姫とか王子とか、劇っぽいし!
アタシは、姫役の代わりに連れてこられたんだ。きっとそうだ!
ジンキというのだけは、よくわからないけど。
なぜこうなったのか、経緯も理由も……わからないことはまだまだ多いけど!
これが青春というものならば。
いいでしょう……!
やってみせましょう!!
「王子さま……会いたいわ……っ」
「ん? なに? 急に怖くなっちゃった?」
「だから!」
「っ!?」
いきなり立ち上がったアタシに、全員、度肝を抜かれる。
「探しに行くしかないわ!」
「あ……まさか逃げる気じゃ……!?」
「行きましょう、一緒に!」
「……いっしょ……? は!?」
あわてて捕まえようとする金髪の男の子の手を、アタシのほうから握りしめる。彼の体温がぶわっと熱くなる。
「あなたも、会いたいんでしょう?」
さっき言ってたじゃない。
王子さまに早く会いたい、って。
ここに居続けても、逃げても、何も変わらないなら。
一歩、踏み出すしかない! そうでしょ?