マリアの心臓


目を逸らさず問いかけた、だけのこと。

そのはずなのに、金髪の男の子はおおげさに喉を転がす。




「ハッ、こりゃたまげた! あんた、ふつうのお姫さまじゃねえな!」

「え?」

「それとも、王子さまに会いたいがためか?」




あごをクイとつかまれる。


お姫さま? 王子さま? はて?

アタシはただ、素朴な疑問を言っただけなんだけど……?




「俺らも早く会いてえよ、あんたの王子さまってやつに」




いやにとげとげしい口ぶり。

下方にいる男の子たちまで感化され、感情をむき出しにしていく。




「神亀の総長だからって調子に乗ってっからな」

「学校でもアタマ張ってるみてえな顔してんのムカつくよな!」

「1年がしゃしゃり出ていいとこじゃねえんだよここは」

「一回シメとかねえと」

「そのための、お姫さま、だろ?」

「本物じゃなくても、知り合いが巻き込まれてるってわかったら、いやでも来るだろ」




そこらじゅうから声がひしめき合って、何の話をしているのかほとんど聞き取れない。

けれど反響する感情たちは、どれも苦しそうだった。


高みの見物をしている女の子たちも、そう。

隅から一歩も動こうとせず、苦々しくこちらを凝視している。



……ん? 見物?



ぴこんっと、頭上で電球が点く。ひらめいちゃった。


もしかして!

姫とかなんとか言ってたのは……劇のことなんじゃ!?


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