マリアの心臓



「なんで……こうなるのよ……っ」




耐えきれず、ポニーテールの女の子がドシドシ迫ってくる。

男の子たちが止めようとするも、聞く耳を持たない。




「あんたは、何にもわかってない……!」




劇の最中に飛び入り参加? いいの? ありなの?

まあアタシも代役だし、なんでもありか!


それとも、彼女もはじめから演者だった、とか?



『自分がイタイ女だって、自覚しなさい』



あの言葉も、実は、セリフで。

だから彼女は、「わかってない」だなんて言って……。




「わかって、ない……アタシが……」

「そうよ! 勘違いもはなはだしい!」

「勘違い……?」




今にも掴みかかりそうな勢いで、アタシと向かい合うポニーテールの女の子。


相変わらず、怒ってる。

泣きそうな目元に、ぐっと力を入れて。

ここにいる誰よりも、苦しんでる。



どうして……。



ハッ。つと、点と点が線になる。


あの「イタイ」の真意って。
もしかして。


自分が居たい女――「王子さまよりも、わたしがそばにいたい」という口説き文句だった……!?



『女も女で大変そうだな』

『だから……逃げるんじゃねえぞ』



あれも、これも。


自分の気持ちから逃げるな、と。
王子さまじゃ意味がないのだ、と。

ときに見守り、ときに背中を押そうとしてくれていたんだろう。



そっか……。そうだったんだ。

アタシはなんてことを……。


王子さまを探しに行こうとしていたアタシは、たしかに、大きな間違いを犯すところだった。


< 23 / 155 >

この作品をシェア

pagetop