お館様の番選び
(朧視点)

あの日のことをあかりは何も覚えていないようだということはあかりの父親から聞いていた。

……あの満月の夜のことだ。

僕が生れた時からあかりはいつも僕の側にいた。

まだ目も良く見えない赤ん坊の時でもあかりの存在をなんとなく感じていた。

あかりからはなんともいえない良い香りがいつもしていて、あかりが側にいない時はその香りを探して泣いた。

歩けるようになると僕はあかりの後をずっとついてまわっていた。

その香りに包まれて過ごすのが好きだった。

言葉を話せるようになると、「あかり。いい匂いするー。」とよく鼻を近づけては、あかりが困ったように自分の体を嗅いでいるのを笑ってみていた。
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