きみの笑顔は、季節外れの太陽のようで
「失礼しますー…」

結局やってきてしまった保健室のドアをそっとあけると、電気さえついていなくて、暗闇と静寂だけが広がっていた。

誰もいない……?
佐々木くんたちはもう帰った……?

もう元気になって保健室から去ったのなら、それに超したことはない。

このまま帰ろうとした時、一番奥のベッドの周りを取り囲むようにひかれていたカーテンの隙間から、「高橋」と佐々木くんが顔を出した。

「ごめんな、急に呼び出して」

「ううん……」

「来てくれてありがとう」

「たまたま、まだ残っていたから……」

戸惑いながらもゆっくりとベッドに近づく。

「宮本くん……」

かなりやせた……?

頬がげっそりしている気がする。

「どうしたの……何があったの……」


「『仲直りしたいのに、“もう関わるな”って言われたら、どうしたらいい?』って、今日聞かれたんだ」


佐々木くんは唐突にそれだけ告げると、「ちょっとここ任せていい?」と私に尋ねた。

「宮本も心配だけど、今週末試合があるから練習に戻らないといけないんだ」

俺、一応レギュラー候補だからさ、と笑う。

「あ、うん、わかった」

確か、大会の予選期間中のはずだ。

私はもう宮本くんとの関わりはないけれど、佐々木くんのお願いなら、と引き受ける。

「ありがとう。本当は保健室の先生がいたらいいんだけど、今日はもう帰っちゃっててさ。悪いんだけど、目が覚めたら体育館まで知らせに来てくれる?」

部活中はスマートフォン見れないから、と彼は付け加える。

私が頷くと、佐々木くんはいつも通りの爽やかな笑顔で「ありがとう」といい、足早に去って行った。


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