きみの笑顔は、季節外れの太陽のようで
「……高橋と話せないのが、辛い」

「宮本くん……」

「傷つけたのはわかってるし、自業自得っていうこともわかってる。それでも、辛いねん。お前に、素っ気なくされるのが」

ほんまに辛い、と彼は繰り返す。

「本心じゃなかってん。言い訳に聞こえるかもしれへんけど、あいつらに高橋とのこと色々聞かれるのが嫌で……もう聞かれへんように、『高橋とは何もない』って答えてん」

そうだったんだ……。

「なあ、高橋」

彼と視線が合う。

弱々しくて、なにかに縋るようなその目から、私は逸らすことができなかった。

「もう無理なん? 何回でも謝るし、もう絶対に悲しませへんから……。『関わらんといて』とか、言わんといて……。二人で帰ろうとか遊びに行こうとか、我儘も言わんから。ただ、普通に話したい。高橋と話したいだけやねん……」

「そんなの……」

ずるいよ、宮本くん。今更、どうしてそんなこと言うの。

やっと、宮本くんがいない毎日に、話せない毎日に、慣れて来たのに。

私、まだ、笑顔で話せるほど、宮本くんのことー…。

「『いいよ』って言って」

「でも……」

今は正直、彼のお願いを聞き入れられるほど自分の気持ちに余裕が無い。

もう、放っておいてくれたらいいのに。
もう、私のことは忘れてくれたらいいのに。

一方で、一度はきっぱりと断ち切ったのにもう一度繋がりを作ろうとしてくれる彼の申し出を断ることが出来るほど、彼との時間を心で整理できていないことに今更ながら気が付く。

本当にずるいのは、私かもしれない。


お願い、お願い、と繰り返す彼に、「もう、わかったよ」と頷く。

「仲直り、しよっか」

自分で提案をしておきながら、この決断は未来の自分を傷つけてしまうかもしれないと不安になる。

相手は、一度片思いした相手。

気を緩めると、また胸の奥にしまった想いが蘇ってきてしまいそうでー…もし想いが再燃してしまったら傷つくのは自分だから。

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