きみの笑顔は、季節外れの太陽のようで
気に食わん奴
     *

「なんやねん、あの顔」

今の今まで自分を睨みつけていた彼女は、一人の男子生徒に名前を呼ばれた瞬間、弾けるような笑みを浮かべる。
――それは、一瞬にして、一足先にやってきた真夏の太陽を連想させるような。

そして男子生徒の隣に立つと、彼女は一段と明るい笑顔を見せた。

「それじゃあね、佐々木くん」

佐々木の隣に立つ俺のことを、一切見ぃひんかった。

俺の存在を拒絶する、というわけではなくて、そもそも俺がその場に存在してないような、彼女の目には本当に自分の姿が映ってないのではないかと錯覚しそうになるほど徹底的に俺を無視する彼女の姿勢が、不快な気持ちをより大きくさせた。

元々、気に食わんかった。

急にぶつかってきたかと思ったら、「触れたくて触れたわけじゃない」と強い眼差しを向けてくる。

部活終わりだって、たまたま目が合っただけやのに、いかにも迷惑そうにサッと逸らす。

これほどはっきりと、自分のことをぞんざいに扱われたことはなくて、腹立たしさと苛立ち、そして少しの戸惑いと驚きを覚えた。

そのくせに。

「なんなん」

別の人間かと疑いたくなるほど、あの男子生徒には、真っ直ぐで明るくて、そして傍からみても幸せであることが一瞬でわかる、弾けるような笑みを見せていた。

独り言のつもりで呟いた言葉は、隣を歩いていた佐々木にはっきり聞こえていたようで、「なにが?」と尋ねられる。
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