きみの笑顔は、季節外れの太陽のようで
「それでは今日も頑張りましょう」

先生が締めの言葉を告げると、一気に教室中が騒がしくなる。

私は自分の身体をクルッと右へ向けると、出来る限り愛想の良い笑みを浮かべながら「宮本くん」と呼びかけた。

「んー? なに?」

「単刀直入に聞くけど」

「どうぞ」

意味ありげな作り笑いに少しの怒りを感じながらも、努めてにこやかに微笑む。

「目的はなに?」

「目的?」

「うん、私の好きな人を知っているから何?」

絶対になにかあるはずなのに、彼は「わからない」といった様子で首を傾げた。

「目的なんてあるわけないやん。好きな人知っているよ、と教えただけで、例えば本人にバラそうとか思ってないよ? 俺、意地悪じゃないもん」

「いや、それは」

「ん?」

口元だけ笑っている不気味な笑顔から、「これ以上は言わせない」という強い圧を感じる。

私は「そうだよね、意地悪じゃないもんね」と上辺だけでも同調しておいた。

ここで彼の怒りを買う必要なんて、全くない。

というか、そもそも、「本人にバラそうとか思ってない」って……なんだか振りに感じるんですけど。

「ほんまに目的なんてないよ? 本人に言おうとも思ってないし。ただ、数学のノート見せてくれたら嬉しいなあ、とは思うけど」

なるほどね。

数学の課題ノートを見せないと、私が好きだということを悠斗に伝えると脅しているわけだ。

まあ確かに、アンコウは課題ノート忘れには厳しいけれど。
忘れた人にだけ、追加で課題を出すし。

それでも。

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