きみの笑顔は、季節外れの太陽のようで
時刻表に記載されている時間通りに駅へやってきた電車に乗り込み、ロングシートの端に座る。

悠斗がワンテンポ遅れて隣に座ってから、「今日から放課後の部活はあるよね?」と尋ねる。

悠斗、また身長伸びたのかな?

顔の位置が、記憶の中よりも少しだけ上にある気がする。

でも、さすがに連休中でそんなに何cmも伸びないよね。
数日間会っていなかったから、高く感じるだけかな。


「ああ、今日から」

窓の外に広がる景色をぼんやりと眺めていた彼は、私に視線を向ける。

いつからだろう。

彼と目を合わせたいのに、いざ目が合うと恥ずかしさに耐えられなくて、逃げるように逸らしてしまうようになったのは。

彼と目が合うだけで、平静を装うことに努力が必要となったのは。

彼の瞳に自分が映るだけで、胸がいっぱいになるようになったのは。

……きっとあの冬の日、かな。


「じゃあ、部活が終わるまで教室で待ってるね」

悠斗の視線を感じながら、何事もなかったかのように真っ直ぐ前を見て答える。

「悪いな、いつも」

「ううん。どうせ家に帰ったってダラダラするだけだから」

悠斗が所属する高校のサッカー部は、水曜日以外毎日放課後に練習がある。
だから部活に入っていない私が悠斗と一緒に帰るためには、彼の部活が終わる時間まで待つしかなかった。

「よくも毎日待てるねえ」と感心半分呆れ半分で言う友達がいるけれど、悠斗と一緒に帰ることが出来るなら、私にとって待つことは全く苦じゃなかった。

部活をしている人たちにとって部活が大切であるように、例えそれほど長い時間ではなかったとしても、私にとっては悠斗と一緒に過ごすことが出来る時間がとても大切だった。

こんな私の重たい気持ち、口が裂けても悠斗に言えないけれど。


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