きみの笑顔は、季節外れの太陽のようで
「なに笑ってんだよ」

「へっ!?」

頭上から呆れ声が降って来る。

「そんなにも人のデート話聞くのが楽しみか?」

「私、笑ってた?」

「おう、変態みたいにニヤニヤしてたぞ」

うわ、私、顔に出しちゃっていたのか……! 

気を付けよう。


「別に、鈴ちゃんの話をが楽しみで笑っていたんじゃないもん」

「そっか」

悠斗は一応頷いたはものの、薄ら笑いを浮かべている。

「……本当だもん」

「はいはい」

「絶対信じていないじゃん!!!」

「わかったから、ほら、降りるぞ」

言い合いをしている間に、いつの間にか学校の最寄り駅についたようだ。


今日も今日とて、すごい人の数。

家の最寄駅で電車に乗る時は空いているのに、途中で複数の鉄道会社が乗り入れを行っている大きな駅に停まるから、降りる時にはすっかり満員電車だ。

家の最寄駅から学校の最寄駅までずっと座っていられるのはありがたいけれど、人波を縫いながら電車のドアにたどり着くのは一苦労で、これだけは1か月たっても全く慣れない。

今日も朝から疲れるなあ。

立ちあがりながらため息をつく。

「ほら、荷物、貸せ」

悠斗は先に立ち上がって私の前に立ち、膝に乗せていたスクールバッグを手に取る。

「え、いいよ、自分で」

「行くぞ」

私が答え終わる前に、自分のカバンと私のカバンを片手で持つと、空いている手で座っている私の腕を引っ張り、立ち上がらせると、ドアの方へ進んでいく。

人波にもまれながら、当たり前のように触れられた手を見つめる。

……悠斗の、こういうところなんだよなあ。

大きな背中に守られながら、私はいつもより簡単に、電車から“脱出”した。
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