きみの笑顔は、季節外れの太陽のようで
ゆっくりとしたテンポで流れるウクレレの演奏を聞きながら食べたお目当てのロコモコは、噂通りハンバーグがジューシーでとっても美味しかった。

これはハマりそう。夏休み中、鈴ちゃんとも一緒に来よう。

お店を出ながら決意を固めていた時、宮本くんから「まだ時間あるやろ?」と声を掛けられる。

「うん、あるよ」

「それならちょっとだけ、遠出しよか」

宮本くんは駅の券売機の前に行くと、お金を投入してチケットを購入する。

「宮本くん! 流石に私払うよ」

「ええって。今日は誕生日祝いって、言うたやん」

「でも……」

「それなら、目的地で何かドリンクでも買って。喉乾くと思うから」

「わかった!」

気合を入れて返事をする私に「相変わらず元気でいいお返事やなあ」と彼は笑う。


「はい、これ」

「ありがと……え!?」

切符を受け取り、思わず声を上げる。

「今から行くの!?」

「うん。片道30分ぐらいやし、誕生日なんやからちょっと遠出しようや」

「嬉しい!! 私、大好きなんだよね、ここ」

切符に書かれている駅名を見て、思わず笑みがこぼれる。

太平洋に浮かぶ陸繋島のその場所は、島の真ん中に、島全体と太平洋を一望出来る展望台がある。

そこからの眺めがとても綺麗で忘れられなくて、家族と一度訪れて以来、ずっともう一度行きたいと思っていた。

また、海沿いにはおしゃれなカフェが立ち並んでいて、海を眺めながら美味しいご飯を食べられるのも、とても気に入っていた。

「ほんま? それならよかった。この前バスケ部の奴らと海入りに来たんやけど、雰囲気良いなあと思ってん」

「だよねえ、ゆったりとした時間が流れていて癒されるよね」

「そうやな」

高ぶった気持ちが抑えきれず、私は一段飛ばしでホームへ続く階段を登る。

「おい、転ぶなよ!」

「わかってる! それより、早く!!」

「はいはい」

滑り込んできた電車へ飛び乗ると、二人がけのボックス席へ並んで座る。

「遠足に行く小学生のようなはしゃぎっぷりやな」

「だって、遠出するの久しぶりなんだもん」

たった片道30分少し。それでも、いつも行かない場所に行くのは新鮮で、心が踊った。

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