きみの笑顔は、季節外れの太陽のようで
ポーン、ポーン……とボールを蹴り上げる音が公園に響く。

慣れ親しんだその音は、心に落ち着きを与え、そして子守歌を聞いているようで、私はスマートフォンを操作したり音楽を聞いたりすることも無く、ただ彼の練習をぼんやりと見つめていた。


一時間ほど練習した後、休憩に入るのか悠斗は私が座っているベンチへ戻ってきた。

「お疲れ様」

彼が持ってきていたタオルを渡すと、「ありがとう」と言いながら受け取る。

「……悠斗はさ、フラれてショックじゃなかったの?」

失恋を思い出させるような質問はデリカシーがなさすぎるかな。

けれど、さっきあっさりと“フラれた”と告げた様子を見ると、別にそこまで凹んでいるわけじゃないのかもしれない。

事実、悠斗は何か躊躇う様子を見せることなくすんなりと答えた。

「別に。だって、仕方がないしな。実際サッカーにしか興味無いし」

「……じゃあどうして付き合ったの」

「……マネージャーにゴリ押しされたし、『良い奴だ』って聞いたから」

本当にその理由だけで付き合ったのかな。

付き合う前に彼女に対して、少しも好意はなかったのかな。

もしそうだとしたらさすがに……と思ったけれど、何も言わなかった。

今更過去の恋愛に、今更口出ししても仕方がない。

「そう思えば真凛って、変な奴だよな」

「え、なにが?」

急に“変な奴”といわれ、思わず眉を曇らせる。

「だって俺が練習しているところ、何も言わずにずっと見てるし。それに放課後だって部活で遅くなるのに、全く文句言わないし」

「まあ、だってねえ、それが悠斗だから」

この言葉が、全てだった。

「……結局俺のこと一番わかっていたのは真凛なのかもな」

「そうだよ。だって幼馴染だもん」

私の返しに、悠斗は「そうだな」と笑う。

「ちょっとスポドリ買ってくるわ。なにがいい?」

「私の分も買ってくれるの?」

「おう、自主練付き合ってくれているお礼にな」

「じゃあ、オレンジジュースで」

「了解」

立ち上がった彼は、颯爽と自販機まで駆けていった。

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