先生との恋・番外編集・
救急から連絡が入って、清水先生と駆けつけた集中治療室で、運ばれた彼女を見るときはいつも、不安でいっぱいになる。
絶対に、彼女が自分で見ることができない姿だ。
はぁはぁと繰り返す呼吸。
マスクで大量に酸素を投与して、なんとか保っている酸素濃度。
早い速度で脈打ち必死に生きようとしている心臓…。
救急の先生から申し送りを受け、近くに向かい声をかける。
額に張り付いた髪を避けてあげると、わずかに目が開く。
「岡本さん?わかる?」
声をかけるけど、返事はない。
この時の彼女は、きっと記憶がないだろう。
苦しさで服の上から心臓を掴もうとして心電図のコードを一緒に引っ張るから、腕の点滴が抜けるかもしれないから、抑制帯でくくりつけられる。
本人は覚えていないだろうけど、それでも、動こうとするんだ。
落ち着くまで、薬を調整しながらそれが続く。
そんな時から彼女を見てるからか、
状態が落ち着いて僕に生意気に返してくるほど元気になると、安心してしまうんだ。
よかった、って気持ちの方が強くて。
だけど、僕のそんな気持ちなんて知らない彼女は、「何笑ってんの?きも」とゴキブリを見るかのような視線で見てくる。
…それも、視線も合わず虚な姿を知っていれば、嬉しい状況なわけで。
ただ、これがすぐに無くなる可能性があることなんて、この職について何回も立ち会ってきてわかっている。
安定、なんてないんだ。
どうして?て思うくらいあっけなく、消えてしまうんだ。
その度に力不足を突きつけられる。