夜桜
一日が終わろうとしているこの時間、私は縁側に座っていた。

私の前には、大きな満月があった。

幾千もの星が散りばめられ、とても綺麗だった。こうしていると、忙しく過ぎる毎日を振り返り、時の流れの速さを感じた。

あれから新選組で過ごすようになり、今に至る。自分の正体はまだ分からないまま。名前も住まいも家族も。何もかも覚えていない。

寝転がり、私は両手を空にかざした。

一体私は誰だ。その問いかけに誰も答え るはずがなく、静寂な空気保ったまま、涼しい風が吹いた。
1864年、四月下旬。
桜が散り、葉桜となり、季節の変わり目を知らせる。
このまま新選組と共に過ごしたい。
彼らに恩返しをしたい。
新選組隊士として、命が尽きるのなら本望だった。私は天を仰ぎ、目を閉じた。
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