甘やかし婚   ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
「佐多は気遣いも上手いし、目の付けどころもいいからね。成績を鼻にかけないうえに努力家だし」


「なによりイケメンですよね! 二十八歳独身、彼女がいないなんて信じられません」


弾んだ声をあげる後輩を苦笑気味に見つめる。

百八十センチ近い長身に軽くパーマをかけた無造作な髪、切れ長の二重の佐多くんは女子社員からとても人気がある。


「私たちからしたらただの同期の男だけどね」


「篠崎さんは見慣れすぎてるんですよ!」


頬を膨らませて抗議する由衣ちゃんは本当に可愛らしい。


「それで塔子は朝からどうしたの? なにか急ぎの用事?」


「まあね。佐多を捜しに来たのもあるけど……今日堂島(どうじま)がこの本社に来るらしいの」


親友が口にした名前に、頭からザッと血の気が引く。


「佐多が朝一でここに来たのはそのせいよ」


「札幌からわざわざどうしてですか?」


険しい表情を浮かべた由衣ちゃんが、若干とがった声で問いかける。


「取引先との商談があるらしいの。それと最近発覚した残務処理がてらですって。来るのは昼からだそうよ」


三カ月前に東京本社営業課から札幌支店に異動したもうひとりの同期、堂島匠眞(たくま)と私は一年半ほど交際をしていた。

半年前、匠眞は突如札幌支店に異動願を出した。

大学入学時に札幌から上京した彼はいずれ故郷に戻りたいと考えていたそうだ。

異動願の受理後、唐突についてきてほしいと言われ、喜ぶより困惑した。
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