甘やかし婚   ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
「ここに俺の子が宿っている可能性もあるんだぞ?」


そっとシーツの上から、お腹のあたりを触れられる。

直接的な表現にカッと頬が熱をもつ。


「大事な妻をわざわざ危険な目に合わせるつもりはない」


きっぱりと言い切られ、返す言葉を失う。

同時に甘かったはずの夜の余韻が、脆くも消えそうな気がした。

昨日の行為は契約の範囲内だと言われた気がした。

彼が最初から後継ぎを望んでいるのはわかっていたのに、なんでこんなに胸が痛いのだろう。

寝不足なのか、軋んだ体のせいなのか、鼻の奥がツンとする。

こんな気持ちを抱くなんて、おかしい。


「沙也?」


黙り込んだ私を怪訝に思ったのか、彼が私の顔を覗き込もうと身を屈めた。


「あの、準備してくるね」


さっと視線を逸らし、彼の手から逃れる。

ふらつく足に力を入れてドアを開け、自室へと足早に向かった。

胸の嫌な疼きだけがなぜかずっと収まらなかった。


結局、今後は彼とともに出勤する方向で話が決まった。

ただし朝から彼が取引先に直行したり、会議があるなど、時間や向かう場所が変わる際は電車通勤するという結論に至った。

帰りは余程の出来事がない限り、関さんに送迎してもらう。

通勤手当は事情を会社に話すよう促され、必要ならば俺が説明すると言われた。
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