甘やかし婚   ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
とりあえず気に入った商品をある程度選んだら場所を変えて試着しようと言われ、三着ほど服を選ぶと、なぜか彼が渋面を浮かべる。


「……予想はしていたが、その控え目具合が沙也らしいな」


困ったように肩を竦め、今度は自身で私の服をどんどん選び始める。


「――これと、あれ。ああ、その白いワンピースも」


テキパキと従業員に告げる姿に慌てる。


「多すぎるわ」


「とりあえず試してみればいい。不要かどうかは俺が判断する」


有無を言わさぬ口調で、彼はさらに服を選びだす。


「次は婚約指輪と結婚指輪だな」


「えっ?」


服を選ぶだけですでにいっぱいいっぱいだったのに、さらに高額な商品を提示されて驚く。


「夫婦が結婚指輪をはめるのは自然だろ?」


「でも、目立つし注目されるんじゃ」


「有難い解釈と注目は、喜んで肯定するつもりだ。一途に想う相手がいる証明になる」


さらりと告げられた言葉に頬が熱をもつ。


あなたのその意見は本音? 


それとも世間へのアピールなの?


恥ずかしい自惚れはしたくないのに、なぜか心が落ち着かない。

答えなんて求めておらず、郁さんの本心なんて気にしないつもりだったのに、なぜこんなに心にひっかかるのか。


「本当は婚姻届を出す前に渡したかったんだが、一生身に着けるものだから沙也の意見を聞いてからにしようと思ったんだ」


“一生”と言う単語が重く心にのしかかる。


……ねえ、それはどういうつもりで口にしているの?


口を開きかけては閉じるという動作を意味もなく繰り返す。

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