甘やかし婚   ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
元恋人ひとりとですら良好な関係を築けなかった私には、複数の人と短期間の交際を繰り返すなんて到底理解できない。


「でも響谷副社長のお兄様って海外法人の社長で、大恋愛の末に結婚されたんですよね」


「そうそう、兄弟でも恋愛面は似なかったのね」


塔子が相槌を打つ。


「響谷副社長って今後来社されたりするんですか?」


「まさか、あんな大企業のトップが来るわけないでしょ。いくらうちが菓子業界の中では古参でそこそこの規模を誇ってるとはいえ、あちらとは比べ物にならないわ」


「でもうちと響谷ホールディングスの取引って長いんですよね?」


あきらめきれない様子の後輩に塔子が肩を竦める。


「まあ長年、傘下の全国展開しているスーパーや百貨店に商品を卸しているけど、商品を共同開発とかは一度もないからねえ」


「でも直近の応接室の予約表に記載があったから担当者の方は度々来社されているわよね」


「さすが沙也、鋭いわね。詳しくは話せないけど今、新たな商談中なの」


「じゃあお会いできるチャンスがあるかもしれないですね!」


「でも副社長は来ないわよ、由衣ちゃん」


冷静に窘めると後輩が反論する。


「もう、沙也さん! 少しは夢を見せてくださいよ」


「私、興味がないし」


「沙也さんっ」


アハハと明るい声をあげて、親友は総務課を出て行った。
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