甘やかし婚   ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
「オーナーが倉戸さんを引き留めたのがわかる気がします」


クスクス声を漏らしながら告げられた台詞に首を傾げた。


「どうぞ。いつものホットカフェオレです」


ふわりと甘く優しい香りが漂う。

夏場でも比較的私は温かい飲み物を頼む場合が多い。


「よかったらこれも召し上がってください」


そう言って風間さんは卵やチーズ、ハムが分厚く挟まったホットサンドイッチをカウンターに置いた。


「え、あの」


「オーナーからです。もちろん代金は結構です」


「いえ、そんな、お支払いします」


「いただいたら俺が叱られます。遠慮なく召し上がってください」


「……とても美味しそうで嬉しいです。甘えてばかりですみません」


小さく頭を下げると、ほかの店員が風間さんを呼んだ。


「どうぞ私に構わずに行ってください」


 
顔をあげ、伝える。

ただでさえ、研修中に押しかけているのだ。

これ以上邪魔はしたくない。


「すみません、慌ただしくて……では少しだけ失礼しますね。オーナーはすぐに戻ると思いますのでゆっくりなさってください」


申し訳なさそうに口にし、風間さんは店員のほうへと向かう。

それでも私の声が届く範囲に留まってくれていて、その気遣いに心が温かくなった。

両手を合わせ小声でいただきます、とつぶやいて口にしたサンドイッチはとても美味しかった。

あっという間に半分くらいを食べ、匠眞との会話にショックを受けていたはずなのに食事ができる自分に驚く。

響谷副社長と風間さんの優しさのおかげだろうか。
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