甘やかし婚   ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
ただの客の憂いをそこまで気にするなんてありえない。

きっとこれは風間さんなりの心遣いなのだろう。

同時になんだか気が抜けて、フッと声が漏れた。

今更取り繕っても無駄だし、普段関わりのない人に相談したほうが忌憚のない意見を聞けるかもしれない。

気まずいなら、今後私がここを訪れなければいい。

優しいながらもどこか強引だった響谷副社長に直接事情を話すよりは、風間さんのほうが話しやすい。

そう考え、意を決して口を開く。

匠眞との別れと先ほどの会話をかいつまんで話した。


「……そうでしたか。倉戸さんを袖にするなんてもったいない真似をしますね」


「いえ、きっと私への不満がたくさんあったんだろうと思います」


過去に思いを馳せていたせいもあり、いつの間にか響谷さんが戻ってきていたのに気づいていなかた。


「悲劇のヒロインぶっていてもなにも変わりませんよ」


突然割って入った男性の言葉がグサリと胸に刺さった。


……悲劇のヒロイン?


「――オーナー、早かったですね」


「急いで終わらせてきた」


響谷さんが、ゆっくりとした動作で私の左隣の席に腰を下ろす。


「考えを理解できない人と一生をともにするのは無理でしょう。あなたは十分努力したし、間違っていませんよ」


まるでなにかの台詞のように淡々と彼は口にする。
< 27 / 190 >

この作品をシェア

pagetop