甘やかし婚   ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
しばらくしてやってきた風間さんは、改めてお礼と謝罪を口にする私を逆に気遣ってくれた。


「郁とは話した?」


当初の目的を終え、席を辞そうとする私に風間さんが問いかける。


「帰り道に、少し」


「それからは?」


「話していません」


私の返答に風間さんが渋面を浮かべる。


「プロポーズした相手になにやってるんだか」


「えっ……」


どうして知ってるの?


驚く私に風間さんはニッと口角を上げる。


「雇われ店長の前に親友なんでね」


風間さんの口調が以前よりもずっと気安いものになっている。

その変化を喜ぶべきなのだろうか。


「……響谷副社長から聞かれたのですか?」


「長年の付き合いだからね」


答えになっていない返答に困惑する。


「でも、お断りしましたので」


「アイツの女性関係の噂話は山のようにあるし、到底受け入れられないと俺も思うよ」


「いえ、評判や噂を気にしているわけでは……」


そういえば響谷副社長も似たような話をしていた。

マイナスイメージを払拭するためにも私との婚姻が必要なのだと。

とはいえ、風間さんの口調にはどこか棘があるような気がする。


「じゃあ、なにが気にいらない? 俺が言うのもなんだけど、容姿と条件は完璧でしょ?」


「女性に人気なのは知ってます。外見も整ってらっしゃるとは思いますけど……条件ってなんですか?」


風間さんの真意がよくわからず真剣に尋ねると、瞬きを繰り返した彼はハハッと豪快に噴き出した。
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