甘やかし婚   ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
「――ここが沙也の部屋だ」


案内された自室はリビングを抜けてすぐにある西向きの部屋だった。

八畳ほどの広い室内には大きめの窓がふたつあり、柔らかなミントグリーンのカーテンがかけられている。

ほかにもひとり掛けソファ、小ぶりのドレッサーなどが置かれ、温かみが感じられた。

大きめのウォークインクローゼットを郁さんが開け、私のキャリーバッグを収納してくれた。


「気に入らないか?」


あまりの豪華さに驚く私に、彼が右隣から声をかける。


「いえ、素敵すぎて……」


「よかった。ほかに必要なものがあれば言ってくれ」


「あ、あのベッドは……」


「俺たちの寝室にある。夫婦が一緒に眠るのは当然だろう? もちろん今日からな」


しれっと告げられた台詞に目を見開く。

この部屋に寝具の類が一切存在しないのはやはり意図的だったのかと悟ると同時に、その先を想像してしまう。

落ち着いたはずの熱がぶり返す。


「さすがに、今ここで求めたりはしない」


「いえ、あの……」


考えを見透かされ居心地の悪さを感じるとともに、少しホッとする。


「そんな風に安心されると、夫としては複雑だが」


誘惑するような眼差しを向けられ、焦る。


「夜になったらもう遠慮しないからな」


長い指が頬に触れ、唇が重なる。

不意打ちのキスに鼓動が痛いくらいに暴れ出す。

そのまま彼が私を長い腕の中に抱き込み、こめかみや耳にキスを落とす。

とりわけ耳が弱い私は逃げようともがくが、見た目と違い力強い彼の腕はほどけない。
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