甘やかし婚   ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
「疲れたか?」


「いえ、ちょっと考え事を……」


「なんの?」


好きな人ができたら今後どうしますか、なんて入籍した日に聞けるわけがない。


「……目まぐるしい一日だったなあと」


軽く視線を逸らし、無難な返答をする。


「そうだな、今日は慌ただしかった。簡単な食事を取り寄せたから食べよう」


そう言って立ち上がった彼にならうように、私も腰を上げる。

洗面所で手を洗い、ダイニングルームに行くと美味しそうな和食が並んでいた。


「あの、これって……」


「俺が作ったと言いたいところだが、あいにく料理は得意じゃないんだ。さっき保が届けてくれた。ここから店までは車で十分ほどだからな」


「風間さんが……」


考え事をしていたせいか、来訪に気づかなかった。


「悔しいが俺より沙也の食の好みを知っているからな。和食が好きなのか?」


六人掛けの大きめのダイニングテーブルに向かい合うように座った彼が尋ねる。


「洋食も中華もイタリアンも基本的には好きだけど、胃もたれをよく起こすので、和食を選ぶ場合が多いの」


「そうか、覚えておく。常備薬はもってきたのか?」


うなずくと私を真剣な目で見つめる。


「後で沙也の常備薬について教えてほしい」


「え……」


「妻の体の状態を把握するのは当然だろう?」


さらりと口にした台詞に、ご飯が喉に詰まりそうになった。


本気で知りたいの?


混乱で風間さんが作ってくれたせっかくの料理の味がまったくわからなくなった。
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