本気の恋を、教えてやるよ。



でも、まさかそんな事を呟くわけにも行かず、喉元までせり上がった疑問を、私はそっと呑み込んだ。


一時間ほどで委員会は終わり、ぞろぞろと立ち上がり会議室から人が消えていく。


慶太もやはり頑なにこちらを見ることなく、立ち上がり部屋を出ていこうとする。


きっと、意図的にこっちを見ないようにしてるんだろうな。そう思うのと同時、そんなにあからさまに避けなくてもいいのに、と思ってしまう。


……わがままなのかな。

付き合う前の、仲のいい友達だった頃に少しでも戻れたらなんて、そう考えてしまうのは──都合が、良すぎるんだろうか。


きっと梓ちゃんにこんなことを考えているだなんて知られたら、烈火のごとく怒るんだろうな。


それに、駒澤くんだって良い気はしない筈だ。


でも、確かに慶太は良い彼氏では無かったかもしれないけど、本当は優しい人だってこと、知ってるから。



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