本気の恋を、教えてやるよ。



このままギクシャクしたままなのは、嫌だな。


慶太が昔の面影を何度も見せてくるから、どうしても期待してしまう。


関わらなくて済むならそれが一番だと分かっているのに、とため息をつきながら自分も席に戻ろうと立ち上がった、その時。


「あ、稲葉さん、筒井さん」


まだ残っていた佐藤部長に声を掛けられ、立ち上がったばかりの私と、もう殆ど会議室から出かけてた慶太は揃って顔を上げた。


「推進係の方だけど、急で申し訳ないんだが今月中に大まかな計画案出してもらってもいいかな。ここ、あと一時間は予約してあるから」


委員会が終わったことでいつもよりラフに声を掛けてくる委員長。


言葉尻は優しいが、「このまま残って計画案作成に着手してくれ」という指示に違いない。


「わ、分かりました」


まさか断るわけにもいかず頷けば、満足そうに頷き「頼んだよ」と残して佐藤部長も会議室を出ていってしまう。



< 277 / 392 >

この作品をシェア

pagetop