本気の恋を、教えてやるよ。
被せるように重たく甘い声が伸し掛る。
はく、と息を吸いながら固まる私を覗き込み、楽斗は私の鼻をちょんとつついた。
「なーんにも考えてませんでしたって顔してる」
「あ、えっと……あの……」
「……少しくらい意識しろっての」
言われて、顔を赤くしながら、そりゃそうだよ……と頭を抱えたくなる。
いい歳した二人が一人暮らしの家で、しかも泊まりで、明日はおあつらえ向きにお休みで、そう思われたって仕方ない。
私としては純粋に日頃の感謝を込めて手料理を振る舞いたい一心だったけど、もしかして遠回しに誘ったと思われてたりしてたんだろうか……そうだとしたら、恥ずかしすぎる。
「ちが、違くて……」
ぽっぽっと熱い頬を隠すように顔を両手で覆う私を、楽斗は腕の中でくるりと半回転させ、私はシンクを背に、楽斗と向き合う形になった。
「何も考えてなかったのは分かってたよ。……それで?」