もう一度、その声が聞きたかった【完結】
圭介と別れてから数日後、
ずっと話をしていなかった両親に呼ばれた。

『さくら、今話いい?』

私はうなずき2人の前に座る。

『毎晩泣いてるようだけど、
体調は大丈夫なの?』

「悪阻もないし、大丈夫だよ。」

『産むって自分で決めたんでしょう。
辛い時は泣いてもいいけど、
その分強くなりなさい!
大変なのはこれからよ!』



「それって…賛成してくれるの…?」
私の声が震える。

『お母さんね、
さくらがお腹にいるってわかった時の事
今でも鮮明に覚えてるわ。
結婚してすぐに流産して
それから5年経ってやっと授かったの。
諦めかけていたから、すごく嬉しくてね…』

母の目が涙に滲んでいた。


『父親がいないのは可哀想だけれど
その分私たちが沢山の愛情を注ぐから…。
次の検診は私も一緒に行くわ。』


私を見つめる母の目は優しかった。


『出産して落ち着いてから
そのあとの事は考えましょう。
さくらが働けるようになるまでは
金銭面の心配はしなくていい。
さくらの事、甘やかす訳じゃないわよ。
とりあえずは無事に元気な赤ちゃんを産む事。
お父さんも協力してくれるって。』

そうでしょう?と母が父に言った。
父は黙ってうなずく。


私はまた涙を流した。
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