幼なじみが愛をささやくようになるまで〜横取りなんてさせてたまるか〜

再会

「いらっしゃいませ」

私はデパートの地下で製菓の販売をしている。毎日多くのお客様相手に商品の説明や販売をしている。ショップ店員はそれだけしていればいいと言うわけではなく裏では発注や梱包などシーズンごとにやることは山ほどある。また、狭い範囲での立ち仕事なので夕方になると足はむくみ辛くなってくる。でも以前いた本社勤務よりは働きやすくやりがいもあるので私はとても満足している。

私自身スイーツに関わる仕事がしたかったので正直なところ事務でも販売員でも差はない。周囲には本社から出されたとかわいそうな目で見られていたが今はそんなことさえ忘れられている。

「唯ちゃん、アソートが少ないから補充しないと」

「本当ですね。この前まではバレンタインで続いてホワイトデー、そのあとは卒業シーズンに入学と続きますもんね。私が裏に行って取ってきますね」

「ありがとね」

今日は私と唯ちゃんのふたりだけ。ハイシーズンや休みの日には本社から補充されるが通常はこの人数。だからこそ相手が大事だが唯ちゃんとはとても気が合う。唯ちゃんは私の1つ下で24歳。高校卒業してから働いているので私よりも経験が長い。それなのに年も上だし本社からきたと言って私を立ててくれる。

「いらっしゃいませ」

男性のお客さんが見え声をかけた。

ショーケースに目を向け考えているよう。隣に並ぶ焼き菓子も見ており、何を買うか悩んでいるみたい。

「何かお使いものですか?」

私は声をかけると男性はふと視線をあげた。

あれ?

見覚えがあったがどこでなのか分からない。以前購入していただいたお客様だったかな?

思い出せず私は接客しようとしたとき、むこうから声をかけられた。
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