愛しのフェイクディスタンス
大切な大切な雅人の光はまごう事なく女なのだ。
何よりも大切な光に欲情する、それが意味することなどいくつもないだろう。
雅人はたどり着いてしまった答えに震え出すほどの恐怖を覚えた。
優奈を愛してしまっている。
女として、たった一人の……女として。
けれど、それを認めるわけにはいかない。
優奈を自分のものにしてしまう訳にはいかない。
何故か、だなんて。心の内に問うまでもない。
恋愛を楽しむ女たちが、雅人の隣で夢見る未来を語る。
その先に広がっていたものはなんだった?
母を苦しめたものは何だった?
雅人に恋をしている優奈が描く未来とは?
”無理だ、勘弁してくれ”
それが心からの言葉で叫びだった。
受け止めるわけにはいかない。
受け入れるわけにもいかない。
この世界を生かす人。
立ち上がる術を見せ、その先に広がる空を教えてくれた唯一を。
恋愛をして、たどり着くであろう当たり前のありふれた未来を雅人は望んでいないのだから。
そうして、私だって女だよ。と縋り付くように伸ばしてきた手を払い除け、酷い言葉をぶつけ。雅人はその場から逃げた。
その日から、ずっと。
(あの夜まで、逃げ続けて……結果が痛々しく弱った優奈)
「……ねえ、ねえってば、まーくん?」
手のひらに細く滑らかな指が触れ、ぞくりと背筋に刺激が走る。
しかしすぐにハッとして、雅人は即席の笑顔を作った。
応答のない雅人を心配している、そんな優奈の声だったから。
「ああ、ゆっくり休んでおくんだ。なるべく早く切り上げてくるから」
「うん、わかった」
「でも眠かったら無理しないで寝てて。優奈に使って欲しい部屋には……悪いな、まだ何もないから。とりあえず今日は俺の寝室で」
その言葉を耳にした優奈の頬が赤く染まっていく。
雅人は優奈の肩に手を置き、その可愛らしい表情が琥太郎の視界に入らないよう、背を向けさせる。
そうして優奈の耳元に囁きかけた。
「何を想像してるんだ? そんなことで照れてる女相手に俺はその気になれないぞ」
唇を押しつけた小さな耳までもが、赤く染まった。